本文へ移動

車載システム

1. 車両とハードウェアは、研究と実装をつなぐ接点

チューリングの自動運転開発は、AIモデル単体で完結しません。実車で動くシステムとして成立させるために、車両の選定・改造、センサー構成、車載計算機、車両制御インターフェース、そして安全設計までを含めて一体で設計しています。

この「現実の車で走らせる」工程は、単なる検証作業ではなく、学習と改善のサイクルを回すための前提条件です。データを収集し、モデルを学習し、車にデプロイして走らせ、結果を次の学習へ戻す。ハードウェアはそのループの始点と終点に存在します。

2. データ収集車両の役割:学習に耐えるデータを「毎日」取る

完全自動運転では、良いモデルだけでは足りません。良いモデルは、良いデータの上にしか育ちません。

チューリングでは、データ収集車両を継続運用し、走行データを日々蓄積しています。ここで求められるのは「動く車を作ること」ではなく、「センサーや収録が安定稼働し、欠損なくデータが取れ続けること」です。

データ収集は、カメラや各種センサーが動作し続けること、収録されたデータが正しい形式で保存され続けること、異常が起きたときにすぐ検知できることが前提になります。つまり、車両は“移動する分散システム”であり、運用と監視を含めて設計する必要があります。

この土台が崩れると、どれだけ計算資源があっても学習が前に進みません。

3. 車載ハードウェア構成:シンプルな入力で、現実の車を動かす

チューリングの車載ハードウェア構成は、一見するとシンプルです。

主な入力はカメラであり、車両の外周に複数台のカメラを搭載しています。さらに測位センサー(GNSSなど)を搭載し、学習や検証に必要な軌跡情報を取得できるようにしています。

車載計算機は、車内の限られた電力・温度・振動環境で動作しなければなりません。そのため、一般的なサーバーやワークステーションと違い、環境耐性を前提とした構成が必要になります。

チューリングでは、車載計算機の上でLinuxを動かし、その上で複数プロセスが協調して動く構成を採用しています。センサー制御、推論、ログ記録、UIなどを役割分担し、プロセス間通信(Pub/Sub)で連携する設計です。システム全体のログを統合的に残し、学習用のRawデータへ接続する点も、この構成の重要な役割です。

4. 安全設計:ソフトだけでなく、物理の最後の防壁を持つ

自動運転のシステムでは、安全性は設計の一部です。

チューリングでは、車とのインターフェース部分に安全性を担保する仕組みを挿入し、異常時の挙動を制御できるようにしています。たとえば、車両との通信の間に安全用のマイコンを介在させ、出力や挙動を検証しながら制御する構成を採用します。リアルタイム性が求められる信号処理は、汎用OSに頼らず、ベアメタルで動かすなど、用途に応じた設計を行います。

加えて、ソフトウェア的なガードだけでは足りません。

万が一に備えて、物理的に信号を遮断できる非常停止手段を用意し、人間が介入できる最後の防壁を持ちます。自動運転は「正しい信号の範囲内で危険な挙動」を起こす可能性もゼロではなく、運用設計としても安全を多重化する必要があります。

5. 拡張セットという考え方:改善サイクルを止めないための実験設計

車載計算機は市販品であり、構成変更の自由度には制約があります。一方で、モデルが大規模化し、実験の密度が上がるほど、車載計算機だけで推論を回すことが難しくなる場面も出てきます。

そこでチューリングでは、車載計算機のみで推論を行う「通常セット」に加え、より大きなモデルや実験的検証のために外部ワークステーションへ推論負荷をオフロードする「拡張セット」を用意しています。これにより、研究の改善サイクルをできるだけ止めずに回せる環境を整えています。

この設計は、量産に向けた最終形を直接示すものではありません。むしろ、モデルとシステムを高速に改善するための実験構成として位置付けられます。完全自動運転の開発では、この改善速度が競争力になります。

6. 今後の展望:複数車種対応と次世代車載アーキテクチャ

車両・ハードウェアの今後の中心テーマは、研究デモを超えて、実用レベルへ移行していくことです。

そのために、まず複数車種への対応を進め、特定車種に依存しない形で自動運転化できる状態を目指します。車種が変わるとセンサー配置、制御特性、信号仕様、搭載スペースなどが変わるため、ここは単純な移植ではありません。

さらに、次世代SoCと車載アーキテクチャへの対応も重要になります。現行の車載計算機でできることには限界があり、より大きなモデルを車載で成立させるための計算機・ECU設計が必要になります。将来的には次世代プラットフォームへの対応、量産を見据えた組み込みアーキテクチャへの接続、必要に応じて独自ECUの開発も含めて検討が進みます。

チューリングの自動運転ハードウェアは、AIの研究成果を現実の車へ接続し、学習と検証のループを回し続けるための基盤です。完全自動運転を社会インフラとして成立させるために、車両とハードウェアの側も、今後さらに進化していきます。

Join us :

完全自動運転という難易度の高い課題を、
様々なバックグラウンドを持つメンバーと
取り組みませんか?