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AI開発の概要および次期GPU計算基盤・自動運転AIの進化と2030年の展望

1. End-to-End(E2E)という設計思想

チューリングは、単一のニューラルネットワークで状況を理解し、運転行動を生成するEnd-to-End(E2E)の自動運転AIを開発しています。歩行者などの対象を個別に認識して「この対象をこう避けましょう」とルールベースで組み立てるのではなく、動画をそのまま入力として受け取り、運転行動を出力するアプローチです。

道路上では「高難度・低頻度」の状況が無数に起きます。工事現場、交通誘導、譲り合い、歩行者の“渡りそうで渡らない”挙動など、例外が尽きない環境に対して、人間は常識や文脈を使って判断しています。このロングテールを前に、ルールや条件分岐を積み上げ続ける方式は、どこかで必ずスケールしなくなります。プログラムの行数を増やすことで解決する性質の問題ではないからです。だからこそ、最終的には「すべてをAIに任せきれる設計」でなければ完全自動運転は成立しないという考えの元、開発を進めています。

E2Eは初速が遅く、動かすまでの難易度も高い技術です。一方で、データと計算を投入すればするほど性能が伸びるフェーズに入ると、改善速度が加速し、指数関数的な成長カーブに乗り得る構造を持ちます。これはチューリング創業時からの一貫した技術的な前提となっています。

2. 開発の本体は「モデル」ではなく「改善サイクル」

E2Eモデルは「動画を入れると運転軌跡が出る」という点ではシンプルに見えます。しかし、実際の開発で支配的なのは、モデルそのものよりも、そのモデルを育てるための仕組みです。

チューリングの開発は、データ収集 → 学習 → 車載デプロイ → 実走検証 → フィードバック、という循環で成立しています。机上の評価だけでは完結せず、実際に車で走らせて初めて見える差(できた/できないに加え、できたけど良くない)が大量にあります。

この差分を見て、次に何を改善するかを決め、必要なデータを設計し直し、学習を回し、再び走らせる。この回転数こそが開発速度であり、勝敗を分けます。モデル開発は一度の正解を当てるゲームではなく、実世界の結果を取り込んだ試行錯誤の総量で前に進むものです。

3. データセントリックという戦略:データセットの設計が性能を決める

チューリングが重視しているのはデータ中心の開発です。走行データは膨大で、しかもそのままでは学習に使えません。欠損や不整合を取り除き、学習に効く分布へ整え、仮説検証に合わせてデータセットを作り分ける必要があります。

重要なのは、データの「量」だけではなく「分布の設計」です。どの状況が足りていないのか、どの種類の難しさに対して学習が不足しているのか。これを見極め、狙って集め、狙って学習へ接続することで初めて改善が加速します。

このデータセット作成を高速に回すために、MLOpsが「工場」として存在します。データを集め、加工し、学習に投入し、結果を戻す。ここを速く回せるほど、モデルの進化も速くなります。

4. 業界潮流とSecond Mover Advantage

現在、自動運転業界はE2Eへと大きく動いています。トッププレイヤーが示したのは、「この物理法則の中で、トランスフォーマー系の大規模ニューラルネットワークを車に載せ、ここまで到達できる」という事実です。これは、後発にとっては非常に大きい意味を持ちます。到達可能性が証明され、目標と登り方が見えるからです。

チューリングは、トッププレイヤーを「正しくトレースし、ちゃんと追いかける」こと自体が強い戦略になると考えています。ソフトウェア産業のような勝者総取りではなく、量産と買い替えのサイクルが存在する自動車産業では、セカンドムーバーにも十分な勝ち筋があります。だからこそ、過度に物語を盛るのではなく、現実の条件下で追いつくための前提条件を整えることに集中します。

5. フロンティアモデルという上位構造と、車載モデルへの変換

完全自動運転のためには、運転に特化した「フロンティアモデル(上位モデル)」が必要になります。これは、ユーザーが直接触れる車載モデルの背後に、より大きく強い基盤モデルが存在する構造です。
自動運転のフロンティアモデルには、視覚・言語・行動を統合する能力(VLA)と、現実世界の振る舞いを理解し未来を予測する能力(世界モデル)が重要になります。

ただし、この巨大モデルをそのまま車に載せることは現実的ではありません。車載には電力・排熱・耐環境性・リアルタイム性という制約があるためです。そこで、世界モデルを介した学習や知識蒸留などを用い、車載で動くサイズへ圧縮したモデルに変換してデプロイする。これが、チューリングが想定する最終的な構造です。

6. 勝ち筋は「AIを信じきる設計」と「前提条件の積み上げ」

チューリングのAI開発は、ルールを増やして問題に追従する発想ではなく、AIを信じきる設計に賭けています。その賭けを成立させるために、GPUを回し続け、データを集め続け、改善サイクルを回し続けます。

完全自動運転は一度のブレイクスルーで突然実現するものではありません。現実世界での結果を取り込み、学習と検証を高速に回し、一般化性能を積み上げていく長期戦です。チューリングは、その長期戦を勝ち切るための「構造」を作り続けています。

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